極小ロット。月10,000件のオーダーで納期遵守率100%!
ブランク工程の革新で売り上げが4.7倍に
カナン製作所さまの取り組み
阿部社長
稼働中のガトリングプレスセンタ1号機
株式会社カナン製作所さま(岩手県盛岡市)
・代表取締役社長 阿部和大
・従業員 36名
・保有設備 ガトリングプレスセンタ(NCT置換)2ライン、2次元レーザ切断機 1台
プレスブレーキ6台、プレス(2次加工用)3台、6軸バリ取り機他
・業種と主力製品 精密板金業。半導体製造装置用筐体・部品
・キャッチフレーズ
「経験豊富な職人と向上心を持った若い人が力を合わせ、半導体製造装置を支える精密板金のパイオニア
(健康経営優良法人2024認定) 」
・
平均ロットサイズは3個。月10,000件超のオーダーをこなす
岩手県盛岡市で精密板金加工業を営む株式会社カナン製作所。
昭和30年自動車板金業として創業。昭和41年に精密板金業に改業。 2025年には創業70周年を迎えます。
現在は半導体製造装置用板金加工品が主力となっています。
デジタル化・グリーン化(再生可能エネルギーの効率的な利用拡大)による半導体需要拡大の中、
それを支える製造装置のモノづくりを支えています。
今回、阿部和大社長からガトリングプレスセンタ(NCT。タレパン置換機。以下ガトリング)導入の経緯や効果について
お話を伺いました。
Q
「御社の生産の特徴を教えてください」
A
「当社の製品はロットサイズが1ケタ台(多くて10個)です。月間にすると、同じものが数十個、
数百個になることもありますが、1ヵ月のまとめ発注ではなく、今日は3個、明日は5個、次の日は1個、
と必要なだけのロットサイズでの注文をいただいています。
多いときは1日あたりのオーダーが500件超(月1万件)になることもあり、また量の変動が1日単位で大きいのも、
特徴です。
1日平均で納品伝票500枚、図面500枚、エクセルだと500行。加工点数は協力企業会で最も多いと言われています。
当社はCAD図もCAD要員2名で対応していますが、これがこなせているのはガトリングがあるからだと考えています。」
Q「極小ロットサイズなのに量産のようですね」
A「当社は8割がリピート品です。試作とかではなく、品質の安定性が求められます。打痕・キズは当然不可ですが、
おかげ様で納めた製品は他社さんと比べても「納めた部材がきれい」と評価いただいています。
また、納期通りに納めることが最も重要なファクターですが、納期遵守率は協力企業会の中でトップクラス。
ほぼ100%です」
Q
「納期が重要なファクターということですが、要求納期はどれくらいですか」
A
「発注から納品までのリードタイムは、原則15日で、特急対応もあります。注文は毎日来ます。
工程は「CAD→ブランク→曲げ→バリ取り等2次加工→溶接」ですが、さらに半数は当社の協力企業様に塗装を
お願いします。
シルク印刷を頼むこともあり、その後検査・出荷となります。15日といっても納期遵守は大変です」
・
抜き工程が最も重要。当社にはガトリングがベストの選択
Q
「ブランク設備としてタレパンではなく、ガトリングを選んだ背景は何ですか」
A
「当社も以前はタレパンを使っていました。以前の現場は、作業者が残業をして人の稼働率は高いのに、
機械の稼働率が低いことに悩んでいました。タレパンが稼働してくれないと、モノができないので、
きちんとした計画が立てられない。当然納期も守れないし、約束できない状況が続いていました」
Q
「どうしてそんなことが起きていたんですか」
A
「当社の製品は超多品種少量で、ロットサイズが少なく点数も多いのが特徴です。
ただタレパンではオートインデックス(金型の回転軸)の使える数が限られます。タレットへの金型の装着数にも
制約があるので、ネスティング(板金シートへの部材の割付)に自由度がなく、割付優先で生産を組まざるを得なく
なっていました。
そのため、飛び込みで急ぎの注文が来た部材を優先し、生産予定のネスティングを後回しにしたり、
鉄系の加工中にステンレスを急ぎで入れたくても、成行だと生産が翌日以降になってしまう。納期を守るため、
機械を止めて、シート交換をしていたり、金型を交換したり、金型の配置に従ってプログラムを書き換える、、、
みんなが忙しくしているのに、なかなかモノができないので、計画の立てようがない状態になっていたと
いうことです。
とにかく抜いたモノができないと何も始まらない。納期管理も何もできない。抜き工程の改善が最も重要と
考えました」
部材が割り付けられた加工後のシート材(ネスティング)と図面。ネスティングは使い捨て。ステンレスと鉄系の比率は6対4。
Q
「抜きの課題を解消するためにタレパンをガトリングに置き換えられたのですね」
A
「今はタレパンも随分と進化したと思いますが、基本的な違いとして、シングルパンチ構造で300型がすべて
オートインデックス(回転軸) になっている点が当社にとっては大きい。ネスティングの制約がなくなるので、
プログラミングも簡単だし、金型300型は機械に入れっぱなしにして、段取りはしない。
注文に応じてネスティングを割り付けるので、加工したらそのネスティングは使い捨てです。
またガトリングのシステム自体が安定して、止まらないで動いてくれるので助かっています。
抜いたものが出来れば、各工程の担当者が何をいつまでに加工しなければいけないのか、現場ごとに
見えるようになります。
これだけの点数を納期通りこなすため、各工程に進捗状況を聞いて指示を出していますが、
ブランクしたモノがないと指示ができないし、何も始まらない。机上で計画を立てても、
エクセルが500行(オーダー件数)にもなるとよくわからない。
とにかくモノが抜けていることが重要なんです。モノがあれば納期はどうにかできる。ブランク材があれば、
後工程も何とか納期を間に合わせようとして現場がついてきてくれるんです」
「金型段取りをしなくてもいいし、
いつ工場に行っても音がします。
チョコ停がほとんどなく安定して
休まず動いてくれるのが、
うちにはありがたいです」
自動運転中のガトリングプレスセンター
GT3300
・ブランク(パンチ)工程の革新で売上は4.7倍に
Q
「ガトリング導入の理由を教えてください」
A
「タレパンからの更新検討時期は、当社にとって厳しい時期でしたが、この流れを変えるためには大きな変革が
必要と考えていました。
ガトリングは当社にとって社運をかけた設備でしたが、取引先に選んでもらうためにはこれしかないと考えました。」
Q
「もう少し具体的に教えてください」
A
「当時すでに取引していた半導体製造装置メーカーの仕事は、これからもどんどん増えていくだろうと思っていました。
何とかついていかなければと考えていましたが、「タレパンが思うように動かず、ボトルネックとなり、
納期が間に合わない」「品質不良がある」という当時の状況の中、このままでは取引が継続できなくなる、
という思いがありました。
品質の確保は当たり前にクリアするとして、ニッチというか隙間ではあるんですけど、皆さんが嫌がる細かい仕事を
積極的に取って、納期通り納めて生き残ろうと考えました。
いかに人手をかけずにブランク材を後工程に供給できるかを考えたときに、当社の仕事に合致する機械として
ガトリングが真っ先に浮かびました。」
Q
「ガトリング導入後の実際の効果はどうでしたか」
A
「導入時は景気が良くなかった時期でもあり、すぐに効果は上がりませんでしたが、苦しい中、納期遵守率100%を
目標に決めました。
半導体業界は生産量の変動が非常に大きいです。生産量が落ちた時にはとにかく我慢ですが、逆に、
仕事が動きはじめると生産量が急に上がる。急に上がると、普通は、部品の供給が追い付かなくなります。
納期が間に合わない取引先が出てくる。
そんな中、うちは、生産量が上がっても納期を頑張って100%守ろうと決め、実際にほぼ100%を守れるように
なりました。
その後、また仕事量が落ちて、次に回復するときには、「納期を100%守れるなら、もう少し多めに仕事ができますか」
ということになり、前回よりも多めの仕事がいただけるようになる。これを繰り返していくうちに、
仕事量がさらに増え、その後、ガトリングの2号機も導入しましたが、昨年は当初の4倍以上の売上を確保することが
出来ました。
ここまで仕事量を増やせたのはガトリングのおかげと言っても過言ではありません。」
・従業員に気持ちよく働いてもらいながら、それぞれの技能を高め、さらなる発展のステージへ
Q
「人手不足と言われていますが」
A
「製造業が盛んではない土地柄のせいか、同業者からの転職組はほとんどいません。多くが異業種からの転職組です。
CAD担当はアパレル会社からうちに来ました。ある意味、素人集団ですが、3~5年かけてじっくり育成をしています。
従業員の3割は女性で、溶接やバリ取り工程でも活躍しています。
オートメーション化で、「だれでも明日からすぐ作業ができます」という考え方もあるかもしれませんが、
でもやっぱり、人が汗して獲得したノウハウを持っているのは何よりも強いと考えています。
そのためにも人を大事にしたい。と考えています」
Q「健康経営優良法人の認定を受けておられます。従業員を大切する社風なんですね」
A「従業員の方に気持ちよく働いてもらえるよう、働く環境、健康に留意してほしいと考えています。
そのため、工場の塗装を明るい色にしたり、従業員の健康増進のためにさまざまな活動をしています」
工場の外壁・内壁の塗装色を明るい色に
Q
「最後に将来展望を教えてください」
A
「現在、工場を増築し、出荷・検査スペースの拡大を図っています。これからさらに発展していくに際し、
工業用地が限られるのが、悩みですが。発展のステージのための体制を築きながら、次世代を育成したいと
考えています」
貴重なお話を、ありがとうございました。
《取材後記》
革新的かつ大胆な設備投資を躊躇なく実行し、会社を大きく成長させてきた阿部社長。
明るく穏やかな雰囲気の中でお話を伺いながら、
「どこにそんなバイタリティが?」と驚かされるばかりでした。
取材の最後には、「もっとガトリングを世にPRして!」という力強い
言葉をいただき、その思いを胸に
取材を終えました。
お客さま情報
株式会社 カナン製作所
〒020-0841岩手県盛岡市羽場10地割1-10
TEL:019-637-8760
HP
:
https://kanan-ss.co.jp/
今回ご紹介したコマツ産機の製品
ガトリングプレスセンタGT3300
製品ページは
こちら
から
ガトリングプレスセンタGT3165
製品ページは
こちら
から
ご利用上の注意
個人情報保護への取り組み